イラスト初心者にとって、パースは大きな壁の一つです。
パースは瞬時に直感的に理解できるものではないのでアレルギー反応を起こしてしまうかもしれませんが、実はそんなに難しいものではありません。
パースを理解すると描けるもの
- 建物など立体的なもの全般
- 背景などの空間
- 複数人が組み合わさった構造
パースを理解することは、立ち絵から卒業するためには避けて通れない壁です。
今回はそんなパースの入門となる「消失点」や「アイレベル」についてのお話です。
消失点(VP : Vanishing Point)とは?
空間にせよ物体にせよ、手前ほど大きく見え、奥へ行くほど小さく見えますよね。
それがどんどん奥へ奥へ行くと、最終的に点になっていきます。
この奥行きが収束する点を「消失点」といいます。
消失点の見つけ方
平行に奥へ進む線を何本か選び、それを延長させるとできる交点が消失点
※道路や看板が完全な平行とは限らないので、線の数は多い方が精度があがります
また消失点を見つけるときに注意しておきたいことが2つ。
- 消失点は1ヶ所ではない
イラスト内で、平行していない物体や空間の数だけ消失点は存在します。 - 消失点は画像の外にはみ出る場合がある
画角によってイラスト内にあることもあれば、イラストからはみ出ることもあります
これを理解するだけで、シンプルな奥行きのある物体や空間を描くことができるようになります。
そして次に紹介する「アイレベル」を理解すると、さらに複雑な立体や空間を描くことができるようになります。
アイレベル(EL : Eye level)とは?
イラストも一枚の写真とするなら「アイレベル」とは、撮影したときのカメラの高さのことです。
アイレベルは「カメラの角度」や「カメラと被写体の距離」は関係ありません。
下の写真だとおおよそこの位置で、アイレベルは地面に対して平行な1本の線になります。
こちらの写真ですが、なんとなく感覚で空撮でもなければ、足元からの撮影でもなく、大体目線くらいからの撮影だろうというのが想像つくかと思います。
そして消失点やアイレベルには、イラストを描く上で非常に役に立つルールが存在します。
※床は平面であることが前提です
消失点とアイレベルの絶対的ルール
消失点やアイレベルには、絵を描く上で役に立つルールが存在します。
ただし床は平面であることが前提としてあります。
どの位置からもアイレベルの高さは常に一定
手前だろうが奥だろうが、いずれの位置からでもアイレベルの高さは一定です。
以下の画像は、腰の高さをアイレベルとした画像です。
全く同じ男性の3Dモデルを、奥行きバラバラの4ヶ所に配置しています。
3Dモデルの位置はバラバラですが、全て腰の位置をアイレベルが通っています。
試しに自分のアルバムから、適当に観光地などで撮った人が写った写真を見てみましょう!
※山や川ではなく、街など比較的平面的なところで撮影したものを見てください
自分の目線から撮った写真だった場合、立っている人の頭は全てアイレベル周辺にきているかと思います。
ただこのアイレベル、実は感覚で線を引いているわけではありません。
消失点はアイレベル上にある
消失点は、必ずアイレベル上のどこかにきます。
逆に言うと消失点がわかれば、アイレベルもわかるということです。
この性質を利用することで、イラストや写真からアイレベルの高さを推測することもできます。
さっきから何度も使っているこちらの下の写真ですが、これはフリー素材で僕が実際に撮影した写真ではありません。
ただ消失点からアイレベルの線を引き、おおよそ高さは175cm前後かな?と予測することができます。
アイレベルの高さがわかると、好きな位置に自由に人などを配置できるようになります。
アイレベル ≒ 水平線(地平線)
アイレベルは空撮でもない限り、ほぼ水平線もしくは地平線と同じラインになります。
下の写真を身長2mの人が、自分の目線で撮ったと仮定しましょう。
すると正確には、アイレベルは地平線より2m高い位置になります。
手前ほど大きく、奥ほど小さく描くのがパースです。
そして地平線ほど奥となると、もはや2mなんて誤差にもならない高さになります。
消失点が先か、アイレベルが先か、イラストが先か
さて、ここまで「消失点」と「アイレベル」について学んできました。
もちろんこれはイラストに活かすための知識です。
ここで一つの問題が出てきたのではないでしょうか。
「消失点を最初に描くの?アイレベルを最初に描くの?それともイラストから?」
という、どこから始めるのか問題です。
イラスト全体の構成を考えてから、まずはラフ画を描く
僕はまず消失点やアイレベルより先に、まずはざっくりとラフ画を描きます。
※個人によりやり方は違います
というのも、まずは「何を魅せたいか」をハッキリとさせ、それがぶれない構成にしておく必要があるからです。
先に背景の空間に全集中してしまうと、最終的に「何を魅せたいかわからないイラスト」になってしまう可能性があります。
ざっくりとラフを描いてから、それにあわせてアイレベルや消失点を設置します。
パースを軽視してはいけないが、縛られすぎる必要もない
アイレベルや消失点を無視するとハッキリと違和感が発生し、イラストやマンガそのものに集中できなくなってしまいます。
が、そこまで完璧なパースに縛られすぎる必要もありません。
というのも、よりよく魅せようとした結果として、パースがずれたり、あえてずらしたりすこともあるからです。
まとめ
パースとは「遠近法」や「全体像」という意味があり、イラスト初心者に立ちはだかる大きな壁の一つです。
瞬時に直感的に理解できるものではありませんが、実はそこまで難しいものでもありません。
今回はパース入門として「消失点」と「アイレベル」について学びました。
消失点とは
- 消失点とは、奥行きが収束する点
- 平行に奥へ進む線を何本か選び、それを延長させるとできる交点が消失点
- 消失点は1ヶ所ではない
- 消失点は画像の外にはみ出る場合がある
アイレベルとは
- 撮影したときのカメラの高さ
- カメラの角度や被写体との距離は無関係
そして消失点とアイレベルには絶対敵なルールが存在します。
消失点とアイレベルのルール
- どの位置からもアイレベルの高さは常に一定
- 消失点はアイレベル上にある
- アイレベル ≒ 水平線(地平線)
まずは構成を考えてラフ画を描いてから、アイレベルや消失点を決めていきます。
アイレベルや消失点を無視すると違和感が発生し、マンガやイラストそのものに集中できなくなってしまいますが、完璧なパースに縛られすぎる必要はありません。
メインを魅せようとした結果、パースに若干のズレが発生することもあります。
また場面が自然の場合、完全な平面のパースだと逆に違和感が発生します。
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