本記事ではイラスト制作者向けのパース入門として、背景描写の基礎知識となる「消失点」と「アイレベル」についての紹介をします。消失点とは?アイレベルとは?これをイラスト制作でどのように活かしていけばいいのでしょうか?
イラスト初心者にとって、パースは大きな壁の一つです。

パースは瞬時に直感的に理解できるものではないのでアレルギー反応を起こしてしまうかもしれませんが、実はそんなに難しいものではありません。
- 建物など立体的なもの全般
- 背景などの空間
- 複数人が組み合わさった構造
パースを理解することは、立ち絵から卒業するためには避けて通れない壁です。
今回はそんなパースの入門となる「消失点」や「アイレベル」についてのお話です。




現役の漫画家です!
「史上最強の魔法剣士、Fランク冒険者に転生する(原作:柑橘ゆすら)」のコミカライズを担当していて累計発行部数155万部突破しました!現在も連載中です。
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消失点(VP : Vanishing Point)とは?
空間にせよ物体にせよ、手前ほど大きく見え、奥へ行くほど小さく見えますよね。


それがどんどん奥へ奥へ行くと、最終的に点になっていきます。
この奥行きが収束する点を「消失点」といいます。


消失点の見つけ方はシンプルです。
平行に奥へ進む線を何本か選び、それを延長させるとできる交点が消失点
※ 道路や看板が完全な平行とは限らないので、線の数は多い方が精度があがります
また消失点を見つけるときに注意しておきたいことが2つ。
- 消失点は1ヶ所ではない
画像内で、平行していない物体や空間の数だけ消失点は存在します - 消失点は画像の外にはみ出る場合がある
画角によって画像内にあることもあれば、画像からはみ出ることもあります


これを理解するだけで、シンプルな奥行きのある物体や空間を描くことができるようになります。
そして次に紹介する「アイレベル」を理解すると、さらに複雑な立体や空間を描くことができるようになります。
アイレベル(EL : Eye level)とは?
イラストを一枚の写真とすると、アイレベルとは撮影したときのカメラの高さのことです。
レベルには「水平線」という意味があり、地面に対して平行な1本の線で表します。


アイレベルにも 2つの注意しておくポイントがあります。
- カメラの角度はアイレベルと関係がない
どんな角度でもアイレベルはかわりません - カメラと被写体の距離はアイレベルと関係がない
距離が近くても遠くてもアイレベルはかわりません
つまりカメラの角度や距離は関係なく、純粋なカメラの高さのことをアイレベルと言います。


上の写真だとアイレベルはこの位置で、成人男性の目線くらいになっています。
「なんでこの位置ってハッキリわかるの?」
なんとなく感覚で空撮でもなければ、足元からの撮影でもないのは想像がつくかと思いますが、ハッキリとした位置まではわかりにくいですよね。
じつは消失点との関係を知っておけば、アイレベルの位置は一瞬でわかります。
イラスト制作で役立つ消失点とアイレベルの関係
消失点とアイレベルは密接に関係していて、ルールがあります。
※ 床は平面であることが前提です
そのルールを知っておくとイラスト制作で非常に役に立ちます。
というか、知らないとちゃんとした構図のイラストが描けません。



そのルールについてお話していきます。
アイレベルの高さは常に一定
手前でも奥でもどこでも、アイレベルの高さは常に一定です。
これを知っていると、キャラクターを描くべき正しい位置がわかるようになります。
すこしわかりづらいと思うので、下の画像を見てください。
この画像は、全く同じ3Dモデルを4か所に配置していて、アイレベルは腰の位置です。


- 全く同じ3Dモデルを4か所に配置
- アイレベルは腰の位置
3Dモデルの位置はバラバラですが、どのモデルもアイレベル上には腰がくるんです。
これは「アイレベルの高さは常に一定」というルールにより、どの位置にいても腰の高さがアイレベルになっているということです。



試しに自分のアルバムから、適当に観光地などで撮った人が写った写真を見てみましょう!
※ 山や川ではなく、街など比較的平面的なところで撮影したものを見てください
自分の目線で撮った写真だったら、立っている人の頭は全員アイレベルらへんにきているハズです。


そして上の画像はアイレベルをふんわりと引いているわけではなく、かなり正確です。
写っている内容にもよるのですが、アイレベルはハッキリとわかることが多いです。
消失点はアイレベル上にある
消失点は、必ずアイレベル上のどこかにきます。
逆に言うと消失点がわかれば、アイレベルもわかるということです。


この性質を利用することで、イラストや写真からアイレベルの高さを推測することもできます。
本記事で何度も使っている下の画像はフリー素材で、僕が実際に撮影したものではありません。
しかしアイレベルを引いてみると、おおよそ175センチくらいかなと予測できます。


アイレベルの高さがわかると、好きな位置に正しく人を配置できるようになります。


アイレベルを参考に3人の3Dモデルを配置してみましたが、いい感じに溶け込んでいますよね。
アイレベルや消失点を知っておくことで、感覚に頼ることなく正解を導くことができます。
ただし三点透視図法の場合、アイレベル上にこない消失点が加わります。


アイレベル ≒ 水平線(地平線)
アイレベルは、ほぼ水平線もしくは地平線と同じラインになります。
※ 過度な空撮の場合などは当てはまりません
下の写真を身長2mの人が、自分の目線で撮ったとします。
「アイレベルの高さは一定」なので、アイレベルは地平線より2m高い位置になるハズです。


しかし地平線ほど奥ともなると、もはや2mなんて誤差にもならない高さになります。



実践!消失点とアイレベル
ここまで「消失点」と「アイレベル」について学んできました。
「消失点とアイレベルは何のために使うの?」
「実際にどう使えばいいの?」
結論を言うと、消失点やアイレベルを使ってイラストを「正しい構図」にして、イラスト全体の「違和感をなくす」ことが目的です。
まずはイラスト全体の構成を考えてからラフ画を描く
「さきに消失点を決めるべき?アイレベルまず描いたほうがいい?」
「何も考えずイラストから描いてもいいの?」
僕はまず消失点やアイレベルより先に、まずは構成を考えてからざっくりラフ画を描きます。
※ 個人によりやり方は違います
というのも、まずは「何を魅せたいか」をハッキリとさせ、それがブレない構成であることが何より大切だからです。



正しい構図はもちろん大切なことですが、そこに囚われすぎて魅せたいものがブレてしまったら本末転倒です。
まずはざっくりとラフを描いてから、それにあわせてアイレベルや消失点を設置します。
パースを軽視してはいけないが、縛られすぎる必要もない


アイレベルや消失点を無視するとハッキリと違和感が発生し、イラストやマンガそのものに集中できなくなってしまいます。
が、そこまで完璧なパースに縛られすぎる必要もありません。
というのも、よりよく魅せようとした結果として、パースがずれたり、あえてずらしたりすこともあるからです。



消失点とアイレベルについてのまとめ
今回はパース入門として「消失点」と「アイレベル」について紹介しました。
最後に今回のことをまとめておきます。
パースには遠近法や全体像という意味があり、イラスト初心者に立ちはだかる大きな壁の一つです。


- 消失点とは、奥行きが収束する点
- 平行に奥へ進む線を何本か選び、それを延長させるとできる交点が消失点
- 消失点は1ヶ所ではない
- 消失点は画像の外にはみ出る場合がある
- 撮影したときのカメラの高さ
- カメラの角度や被写体との距離は無関係
そして消失点とアイレベルには絶対敵なルールが存在します。
- アイレベルの高さは常に一定
- 消失点はアイレベル上にある
- アイレベル ≒ 水平線(地平線)
これをイラスト制作で活用するとき、まずは構成を考えてラフ画を描いてから、アイレベルや消失点を決めていきます。
アイレベルや消失点を無視すると違和感が発生し、マンガやイラストそのものに集中できなくなってしまいますが、完璧なパースに縛られすぎる必要はありません。
メインを魅せようとした結果、パースに若干のズレが発生することもあります。
また場面が自然の場合、完全な平面のパースだと逆に違和感が発生します。



またパースは消失点やアイレベルで終わりではありません。
ステップアップとして、下の記事もぜひご覧ください。


それでは、楽しいお絵描きライフを!